民法大改正資料21 賃借物の一部滅失等による賃料の減額等(民法第611条関係) 解説 民法改正要綱案

現在、100年に一度の民法の大改正作業が行われています。来年(平成27年)の宅建試験には絶対に出題されませんから安心してください。しかしながら、知識の先取りをし、「宅地建物取引士」に向けて一緒に識見を高めていきましょう。なお、以下の記述は、あくまで平成27年2月10日時点における改正案であって、確定したわけではありません。さらに、修正される場合もありえます。修正されたら内容を改定します。 
  【平成27年2月27日更新


現在の条文】
民法第611条(賃借物の一部滅失による賃料の減額請求等)
1 賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは,賃借人は,その滅失した部分の割合に応じて,賃料の減額を請求することができる

前項の場合において,残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは,賃借人は,契約の解除をすることができる。

※2項には「前項の場合において」と書いてありますので、「賃借人の過失によらないで滅失したとき」に解除できることになります。賃借人の過失により滅失したときは解除できないということになります。


改正案の内容】(H27年2月10日決定要綱案)
民法第611条の規律を次のように改めるものとする。
民法611条(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)
(1) 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される

(2) 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは,賃借人は,契約の解除をすることができる。

※現在の民法は「減額を請求できる」、改正案(1)は当然に減額される。」
※改正案(2)は、解除権につき、賃借人に過失がないことを前提にしていません


【コメント】
例1 賃借人に過失がない場合
 地震のがけ崩れにより賃借している建物の3分の1が滅失し、賃借人は、建物の3分の1を使用収益できなくなってしまった。
結論⇒改正案(1)によれば、賃料は、当然に3分の1減額されます。
① 賃借物の一部滅失につき、賃借人に帰責事由がない場合は、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、当然に減額されます。
② 現行民法であれば、当然に減額されるのではなく、減額請求することができ、減額請求すると減額されます。

例2 賃借人に過失がある場合
 建物の賃借人がタバコの不始末(過失)で賃借建物の3分の1を燃やしてしまった。
① 賃借物の一部滅失につき、賃借人に過失がある場合には、当然に賃料は減額されません。⇒改正案(1)
② 現行民法でも、減額請求できません。

例3 賃借目的が達成できない場合
 賃借物の一部が滅失し、残存部分のみでは賃借人が賃借目的を達することができない状態である。
① 改正案(2)によれば、一部滅失につき賃借人に過失がある場合も、過失がない場合も、賃借人は解除できます
※賃借人に過失がある場合は、もちろん賃貸人は債務不履行に基づき損害賠償請求することができます。

② 現行民法は、一部滅失につき賃借人に過失がない場合は、賃借人に解除権を認めていますが、賃借人に過失がある場合は解除権を与えていません。



【民法大改正資料の一覧】
民法大改正資料1 錯誤について
民法大改正資料2 意思能力について
民法大改正資料3 心裡留保について
民法大改正資料4 詐欺・強迫について
民法大改正資料5 意思表示の効力発生時期
民法大改正資料6 代理人の行為能力(民法102条)について
民法大改正資料7 民法105条 復代理人を選任した代理人の責任
民法大改正資料8 代理権の濫用
民法大改正資料9 職業別の短期消滅時効等の廃止 
民法大改正資料10 債権の消滅時効のおける原則的な時効期間と起算点⇒26年11月4日更新
民法大改正資料11 定期金債権等の消滅時効
民法大改正資料12 敷金
民法大改正資料13 賃貸借の成立(民法601条)
民法大改正資料14 賃貸借の存続期間(民法604条)
民法大改正資料15 短期賃貸借(民法602条)
民法大改正資料16 不動産の賃借人による妨害排除等請求権
民法大改正資料17 不動産賃貸借の対抗力、賃貸人たる地位の移転、賃貸人たる地位の移転を留保する合意
民法大改正資料18 合意による賃貸人たる地位の移転
民法大改正資料19 賃貸物の修繕等(民法606条1項関係)
民法大改正資料20 賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了
民法大改正資料21 賃借物の一部滅失等による賃料の減額等
民法大改正資料22 転貸の効果(民法第613条関係)

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

No title

宅建受験生です!
民法大改正案が来年2月に国会へ提出されると聞きました。
来年中には成立・公布されますでしょうか?もし平成27年に大改正民法が成立した場合、施行は平成28年からだと聞いていますが、先生のご意見で構わないので是非施行時期を教えていただけませんか?

それから最も不安なことなのですが、大改正後の民法が施行された場合、
宅建や行政書士、司法書士、司法試験など民法が出題される資格試験の問題が様変わりし過去問が全く使えなくなってしまうと聞いたのですが、それは本当なのでしょうか?施行が恐ろしいです

Re: No title

こんにちは
 平成27年2月に民法大改正の要綱案を決定し、
 平成27年3月に通常国会に提出というスケジュールになっているようです。
 日本をとりまく政治状況が極めて不安定であるため、国会審議がどのように混乱するか予断を許しませんが、審議に時間がかかるでしょうから、平成27年4月1日に衆議院・参議院を通過して公布されるということはないと思います。
 公布された場合、あらゆる民法以外の法律の手直しをしなければならないので、施行日は公布から1年経過した日だと思います。したがって、平成28年4月1日施行日にはならないと思います。
 宅建試験や行政書士試験は、その年の4月1日に施行されている法令から出題されることになっていますから、結局、平成29年度試験から、改正民法が出題されることになると思っています。

 判例の見解を条文化したものが多いので、全く、今までの過去問題が使えないということもありませんが、既存の過去問題と実際の条文の肢番号が変わったり等、使いづらいと思いますので、やはり一新した方がよいかと思います。

> 宅建受験生です!
> 民法大改正案が来年2月に国会へ提出されると聞きました。
> 来年中には成立・公布されますでしょうか?もし平成27年に大改正民法が成立した場合、施行は平成28年からだと聞いていますが、先生のご意見で構わないので是非施行時期を教えていただけませんか?
>
> それから最も不安なことなのですが、大改正後の民法が施行された場合、
> 宅建や行政書士、司法書士、司法試験など民法が出題される資格試験の問題が様変わりし過去問が全く使えなくなってしまうと聞いたのですが、それは本当なのでしょうか?施行が恐ろしいです

ご意見ありがとうございます!!

氷見先生、ご意見の提供ありがといございます!
なんだか一安心しました・・とはいえ、早めに合格したほうがいいということは言うまでもないので、勉強を少しずつやっていきます。
民法改正が影響する条文を解説した書籍を購入しようと思ってましたが、氷見先生の解説資料で足りました^^
ホントにありがとうございます!
プロフィール

氷見敏明

Author:氷見敏明
FC2ブログへようこそ! こんにちは、氷見(ひみ)です。私は、宅建指導歴20年、不動産会社、金融機関、専門学校、大学、財団法人、社団法人、クレアールアカデミー、住宅新報社等で老若男女を問わず、延べ1万人以上指導してまいりました。また、他の国家試験の民法の論文指導・解説等をおこない、その過程で多くの方々から質問を受け、受験生の疑問はどこかを熟知し、分かりやすい解説とは何かを追及しております。

主な著作物・『楽学宅建 基本書 』『楽学宅建 一問一答 ○×問題』『楽学マンション管理士(共著)』『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者(共著)』『まんが はじめて行政書士会社法』『まんが はじめて行政書士記述対策(共著)』『ユーキャンのマンション管理士これだけ一問一答集(共著)』『ユーキャンの管理業務主任者これだけ一問一答集(共著)』『マンション管理士再現問題集(共著)』『管理業務主任者再現問題集(共著)』その他雑誌等に記載多数。

最新記事
カテゴリ
リンク
月別アーカイブ
最新トラックバック
今日の運勢はどんなんかな?おっ!
今日の天気はどうかな?宅建試験日(10月第3日曜日)のお天気は?

-天気予報コム- -FC2-
検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QR
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる