民法大改正資料19 賃貸物の修繕等(民法606条) 賃貸人の修繕義務・賃借人の修繕の権利 解説 民法 要綱案

現在、100年に一度の民法の大改正作業が行われています。来年(平成27年)の宅建試験には絶対に出題されませんから安心してください。しかしながら、知識の先取りをし、「宅地建物取引士」に向けて一緒に識見を高めていきましょう。なお、以下の記述は、あくまで平成27年2月10日時点における改正案であって、確定したわけではありません。さらに、修正される場合もありえます。修正されたら内容を改定します。 
  【平成27年2月27日更新


現在の条文】
第606条(賃貸物の修繕等)
1項 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。


改正案の内容】(H27年2月10日決定要綱案)
民法第606条第1項の内容を次のように改める予定です。

賃貸物の修繕等(民法第606条第1項関係)
(1) 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要になったときは、この限りでない。
(2) 賃貸物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
ア 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
イ 急迫の事情があるとき。

 ※アンダーラインの部分が追加されます。


【コメント1】
◆ 賃貸人の修繕義務の有無
① 設問
 A所有の建物をBが賃借しました。賃借している建物が雨漏りしてきた場合、修理義務を負うのはA又はBのどちらか?
解説⇒原則として、賃貸人Aが修繕義務を負います。改正案(1)本文によれば、「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。」と定めています。この内容は、現行の民法と同じです。

② 設問
 A所有の建物をBが賃借しました。Bは、屋根に上がって、飛んだり跳ねたりして遊んだため瓦が割れてしまい、雨漏りするようになりました。この場合、Aは修理義務を負いますか?
解説⇒賃貸人Aは修繕義務を負いません。改正案(1)ただし書きによれば、「賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要になったときは」、賃貸人は修繕義務を負わないと定めています。すなわち、賃借人の故意又は過失によって賃借物を壊した場合には、賃貸人は修繕義務を負いません。


【コメント2】
◆ 賃借人の修繕をする権利を具体化
 賃借人は、自ら賃借物を修繕する権利があるか否かについては、現行民法に明確に定めた規定はありません。
 改正案(2)では、次の場合には、賃借人に修繕の権利があることを定めています。


① 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知したにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、賃借人は修繕する権利があります。⇒改正案(2)ア ※注1

② 賃貸人が修繕が必要であることを知ったにも関わらず、賃貸人が相当な期間内に必要な修繕をしないときは、賃借人は修繕する権利があります。⇒改正案(2)ア

③ 例えば、台風で、賃借している建物の屋根が吹き飛んでしまった。直ちに修繕をしなければならないのに、家主に連絡したが、家主が海外に行っており連絡がつかないと言う場合、賃借人は修繕する権利があります。⇒修繕すべき急迫の事情がある場合には、賃借人は修繕する権利があります(改正案(2)イ)。


※注1 修繕すべき箇所があるときは、賃借人は,遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければなりません(現行民法615条)。

【民法大改正資料の一覧】
民法大改正資料1 錯誤について
民法大改正資料2 意思能力について
民法大改正資料3 心裡留保について
民法大改正資料4 詐欺・強迫について
民法大改正資料5 意思表示の効力発生時期
民法大改正資料6 代理人の行為能力(民法102条)について
民法大改正資料7 民法105条 復代理人を選任した代理人の責任
民法大改正資料8 代理権の濫用
民法大改正資料9 職業別の短期消滅時効等の廃止 
民法大改正資料10 債権の消滅時効のおける原則的な時効期間と起算点⇒26年11月4日更新
民法大改正資料11 定期金債権等の消滅時効
民法大改正資料12 敷金
民法大改正資料13 賃貸借の成立(民法601条)
民法大改正資料14 賃貸借の存続期間(民法604条)
民法大改正資料15 短期賃貸借(民法602条)
民法大改正資料16 不動産の賃借人による妨害排除等請求権
民法大改正資料17 不動産賃貸借の対抗力、賃貸人たる地位の移転、賃貸人たる地位の移転を留保する合意
民法大改正資料18 合意による賃貸人たる地位の移転
民法大改正資料19 賃貸物の修繕等(民法606条1項関係)
民法大改正資料20 賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了
民法大改正資料21 賃借物の一部滅失等による賃料の減額等
民法大改正資料22 転貸の効果(民法第613条関係)


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氷見敏明

Author:氷見敏明
FC2ブログへようこそ! こんにちは、氷見(ひみ)です。私は、宅建指導歴20年、不動産会社、金融機関、専門学校、大学、財団法人、社団法人、クレアールアカデミー、住宅新報社等で老若男女を問わず、延べ1万人以上指導してまいりました。また、他の国家試験の民法の論文指導・解説等をおこない、その過程で多くの方々から質問を受け、受験生の疑問はどこかを熟知し、分かりやすい解説とは何かを追及しております。

主な著作物・『楽学宅建 基本書 』『楽学宅建 一問一答 ○×問題』『楽学マンション管理士(共著)』『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者(共著)』『まんが はじめて行政書士会社法』『まんが はじめて行政書士記述対策(共著)』『ユーキャンのマンション管理士これだけ一問一答集(共著)』『ユーキャンの管理業務主任者これだけ一問一答集(共著)』『マンション管理士再現問題集(共著)』『管理業務主任者再現問題集(共著)』その他雑誌等に記載多数。

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