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民法大改正資料17 不動産賃貸借の対抗力、賃貸人たる地位の移転、賃貸人たる地位の移転を留保する合意(民法第605条関係) 解説 民法要綱案解説

現在、100年に一度の民法の大改正作業が行われています。来年(平成27年)の宅建試験には絶対に出題されませんから安心してください。しかしながら、知識の先取りをし、「宅地建物取引士」に向けて一緒に識見を高めていきましょう。なお、以下の記述は、あくまで平成27年2月10日時点における改正案であって、確定したわけではありません。さらに、修正される場合もありえます。 
  【平成27年2月27日更新


現在の条文】
(不動産賃貸借の対抗力)
第605条  不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その後その不動産について物権を取得した者に対しても、その効力を生ずる。


改正案の内容】(H27年2月10日決定要綱案)
民法第605条の内容を次のように改めるものとする。

(不動産賃貸借の対抗力、賃貸人たる地位の移転等)
(1) 不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。

(2) (1)、借地借家法(平成3年法律第90号)第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。

(3) (2)の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。

(4) (2)又は(3)後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。

(5) (2)又は(3)後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、民法第608条の規定による費用の償還に係る債務及び7(1)の規定による7(1)に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。


【コメント1】
 現在の民法605条には、「第605条  不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その後その不動産について物権を取得した者に対しても、その効力を生ずる。」と定めていますが、これを例1の図で説明します。
不動産賃貸借の対抗力1
① 地主Aは、自己所有の土地をBに賃貸し、Bは賃借権の登記を取得した。

② その後、Aは、Cに土地を売却したとしても、Bは先に賃借権の登記をしているので、買主Cに賃借権を対抗できる。

③ 買主Cは、所有権移転登記を取得した場合でも、賃借権の負担のある土地を取得することになる。
※ 所有権も地上権も物権ですが、賃借権は物権ではなく債権です。
 賃借権の登記を取得すれば、その後、その不動産の所有権、地上権(例2の図)、賃借権を取得した者に対しても、登記した賃借権を対抗できると解釈されているので、改正案(1)に「物権を取得した者その他の第三者」に対抗できると定めました。改正案(1)の「その他の第三者」に賃借権を取得した者が含まれることになります。


【コメント2】
賃貸人の地位の移転の図1

改正案(2)「(1)、借地借家法(平成3年法律第90号)第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。 」

改正案(4)「(2)の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。」

改正案(2)と(4)を上の図に当てはめて説明します。
① Bは、建物所有を目的とする土地賃借権を地主Aから取得。
 Bは、借地上に建物を建築し、B名義の建物登記をした。⇒この時点で、土地が売却されても、土地賃借権を土地の譲受人に対抗できる効力を取得します(借地借家法第10条)。

② Aは、Cに土地を売却すると、賃借人Bの承諾がなくても、賃貸人たる地位がAからCに移転します(改正案(2))。
 Cが賃貸人たる地位をBに主張するには、移転登記を取得しなければなりません(改正案(4))。⇒なぜなら、地主Aは、Dにも同じ土地を二重譲渡するかもしれません。賃借人Bにとっては、二重払いの危険がありますから、誰が賃貸人かを明確にしてもらわないと困りますので、賃貸人たる地位を主張するには移転登記が必要だとしたのです。


【コメント3】
(1) 前提知識の勉強をしましょう。
 改正案(3)「賃貸人たる地位を留保する旨の合意」を勉強する前に、転貸借の基礎を復習しましょう。

1転貸借の基礎知識

【コメント2】②で述べたように、不動産賃借権者が対抗要件を取得していれば、賃貸不動産が売却された場合、特段の事情がない限り、賃貸人たる地位も当然に買主に移転します。
 そこで、賃貸不動産の売買をする際の「賃貸人たる地位を留保する旨の合意」について、次の図で説明します。

賃貸人たる地位を留保する旨の合意
① Aは自己所有のビルをBに賃貸し、Bは引渡を得た⇒第三者に対する対抗力を取得

② Aは、Dにビルを売却すれば、所有権はDに移転するのが原則ですが、その際、賃貸人たる地位はAのままにするという「賃貸人たる地位を留保する旨の合意」をした。⇒ちなみに、最高裁は無効だと判断
 Aは所有者ではないけど、賃貸人としてビルをBに貸し、Dは所有者であるがBに貸しているわけではないという状態になります。そこで、どのように、これを法律構成するかというと、所有者となったDは、Aに賃貸し、AはBに転貸しているというように考えます。もちろん転貸に対するDの承諾はあります。

③ 改正案(3)は、
ⅰ) 不動産の譲渡人A及び譲受人Dの「賃貸人たる地位を譲渡人Aに留保する旨の合意が有効になるためには、不動産の譲受人Dが譲渡人Aに賃貸する旨の合意が必要です。
 買主DとAとの間で賃貸借契約を締結すれば、「賃貸人たる地位を留保する旨の合意」は有効になり、賃貸人たる地位がAからDに移転しないことになります。⇒改正案(3)前段。
ⅱ) 「賃貸人たる地位を留保する旨の合意」が有効になされ、賃貸人たる地位が移転しなかった場合において、その後、譲渡人Aと譲受人Dとの間の賃貸借が終了したときは、譲渡人Aに留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人Dに移転する。改正案(3)後段
   ↓
ⅲ) 譲受人Dに賃貸人たる地位が移転した場合、DがBに賃貸人たる地位を主張するには(退去の要求)、もちろんDに登記が必要です。⇒改正案(4)
   ↓
ⅳ) 譲受人Dに賃貸人たる地位が移転した場合は、敷金返還債務は、譲受人Dが負うことになります。
 また、賃借人Bが必要費(修理費用)や有益費(壁紙の張り替え費用)を支出した場合、必要費・有益費返還債務もDに移転します。⇒改正案(5)


※注1 ところで改正案(5)の文言に「承継人」とありますが、これは、例えばDが死亡した場合のDの相続人を承継人といいます。
※注2 有益費は、契約終了時に、賃貸人が支払うことになっています(民法608条2項)

【民法大改正資料の一覧】
民法大改正資料1 錯誤について
民法大改正資料2 意思能力について
民法大改正資料3 心裡留保について
民法大改正資料4 詐欺・強迫について
民法大改正資料5 意思表示の効力発生時期
民法大改正資料6 代理人の行為能力(民法102条)について
民法大改正資料7 民法105条 復代理人を選任した代理人の責任
民法大改正資料8 代理権の濫用
民法大改正資料9 職業別の短期消滅時効等の廃止 
民法大改正資料10 債権の消滅時効のおける原則的な時効期間と起算点⇒26年11月4日更新
民法大改正資料11 定期金債権等の消滅時効
民法大改正資料12 敷金
民法大改正資料13 賃貸借の成立(民法601条)
民法大改正資料14 賃貸借の存続期間(民法604条)
民法大改正資料15 短期賃貸借(民法602条)
民法大改正資料16 不動産の賃借人による妨害排除等請求権
民法大改正資料17 不動産賃貸借の対抗力、賃貸人たる地位の移転、賃貸人たる地位の移転を留保する合意
民法大改正資料18 合意による賃貸人たる地位の移転
民法大改正資料19 賃貸物の修繕等(民法606条1項関係)
民法大改正資料20 賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了
民法大改正資料21 賃借物の一部滅失等による賃料の減額等
民法大改正資料22 転貸の効果(民法第613条関係)

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氷見敏明

Author:氷見敏明
FC2ブログへようこそ! こんにちは、氷見(ひみ)です。私は、宅建指導歴20年、不動産会社、金融機関、専門学校、大学、財団法人、社団法人、クレアールアカデミー、住宅新報社等で老若男女を問わず、延べ1万人以上指導してまいりました。また、他の国家試験の民法の論文指導・解説等をおこない、その過程で多くの方々から質問を受け、受験生の疑問はどこかを熟知し、分かりやすい解説とは何かを追及しております。

主な著作物・『楽学宅建 基本書 』『楽学宅建 一問一答 ○×問題』『楽学マンション管理士(共著)』『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者(共著)』『まんが はじめて行政書士会社法』『まんが はじめて行政書士記述対策(共著)』『ユーキャンのマンション管理士これだけ一問一答集(共著)』『ユーキャンの管理業務主任者これだけ一問一答集(共著)』『マンション管理士再現問題集(共著)』『管理業務主任者再現問題集(共著)』その他雑誌等に記載多数。

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