民法大改正資料16 不動産の賃借人による妨害排除等請求権 解説 民法債権法改正 要綱案

現在、100年に一度の民法の大改正作業が行われています。来年(平成27年)の宅建試験には絶対に出題されませんから安心してください。しかしながら、知識の先取りをし、「宅地建物取引士」に向けて一緒に識見を高めていきましょう。なお、以下の記述は、あくまで平成27年2月10日時点における改正案であって、確定したわけではありません。さらに、修正される場合もありえます。 
  【平成27年2月27日更新


★ この改正案の内容は、判例の問題として今年(平成26年)の宅建試験に出題された内容ですね。 \(^^;)

現在の条文】
 現在の民法にはありません。

改正案の内容】(H27年2月10日決定要綱案)
★不動産の賃借人による妨害排除等請求権について、次のような内容を設けるものとする。
(不動産の賃借人による妨害排除等請求権)
 不動産の賃借人は、4(2)に規定する対抗要件を備えた場合において、次の(1)又は(2)に掲げるときは、それぞれ当該(1)又は(2)に定める請求をすることができる。

(1) その不動産の占有を第三者が妨害しているとき
 その第三者に対する妨害の停止の請求
(2) その不動産を第三者が占有しているとき
 その第三者に対する返還の請求


【コメント】
① 所有権と妨害排除請求権・返還請求権
ⅰ) Aの土地に、Ⅹが勝手に車を置いたとしましょう。この場合、Aは、所有権を妨害されているので、妨害排除請求(車を撤去しろ!)できます。⇒所有権に基づく妨害排除請求権

ⅱ) また、YがAの土地に勝手に建物を建てて、Aの土地を占有したとしましょう。Aは土地を奪われているので、所有権に基づいて返還請求できます。⇒所有権に基づく返還請求権


② 不動産賃借権と妨害排除請求権・返還請求権
ⅲ) Aの土地をBが賃借したのに、Cが勝手に車を置いた。
ⅳ) Aの土地をBが賃借したのに、DがAの土地に勝手に建物を建てて、Aの土地を占有したとしましょう。
     ↓
 賃借権は、債権です。債権は、債権者が債務者に対して何かを請求できる権利です。債務者以外の人(CやD)には何かを請求できません。したがって、ⅲ)の場合、賃借権者Bは、賃借権に基づいてCに妨害排除請求できません。
 また、ⅳ)の場合、Bは、Dに賃借権に基づいて返還請求できません。
     ↓
 そこで、最高裁判所は、2つのいづれかの方法で、不動産賃借権者Bを保護することにしました。
(イ)  債権者代位権の行使
 Bは、自分の賃借権を保全するため、地主Aの所有権に基づく妨害排除請求権や返還請求権を代わりに行使することができる(債権者代位権の行使)。
(ロ) 賃借権に基づく妨害排除・返還請求
 第三者に対抗できる対抗要件を備えた不動産賃借権は、賃借権に基づいて妨害排除請求や返還請求できる。
 前述ⅲ)とⅳ)の例で、Bが土地賃借権の登記をしていた場合は、Cに対して妨害排除請求(車の撤去請求)、Dに対して返還請求(建物撤去土地明渡請求)を直接することができます。⇒この最高裁判所の判例を改正案として定めました

大改正資料16の図

③ 賃借権に基づく妨害予防請求権は認めない
 ①で説明したように、所有権を侵害されたら、その侵害を排除する請求権が所有者に認められています。これを物権的請求権といい、3つあります。

ⅰ) 妨害排除請求権⇒A所有の土地に、Xが勝手に車を置いている場合、Aは、「どけろ!」と主張できる。

ⅱ) 返還請求権⇒A所有の土地に、Yが勝手に家を建ててAの土地を奪っている。「建物撤去して明け渡せ!」とAはYに主張できる。

ⅲ) 妨害予防請求権⇒ⅰ)、ⅱ)は、現実に侵害していますが、妨害予防請求権は、侵害のおそれがある場合の請求権です。まだ、侵害していない場合です。
資料16妨害予防請求権
 A所有の土地の隣地(W所有)が、今にもがけ崩れしそうな場合、「コンクリートで固めてがけ崩れが起きないようにしろ!」と主張できる権利を妨害予防請求権といいます。
結論⇒対抗力のある賃借権者には、妨害排除請求権と返還請求権は認めるが、妨害予防請求権は認めないとしました。

認めない理由◆⇒部会資料によれば、理由を2つ上げています。
ア.認めた判例がない。
イ.本来、賃借権者には、妨害排除請求権も返還請求権もないのに、対抗力を備えた賃借権の場合にのみ例外的に認めたのだから、さらに、妨害予防請求権まで認める条文を設ける必要はない。


④ 対抗要件を備えた不動産賃借権(4(2)に規定する対抗要件を備えた場合)
 第三者に対抗できる対抗要件を備えた不動産賃借権とは、
ⅰ) 土地の賃借権者が賃借権の登記を取得した場合(民法605条)
 地主Aから土地を賃借したBが賃借権の登記をすれば、その後AがCに土地を売却した場合でも、BはC(第三者)に土地賃借権を対抗(主張)できる。

ⅱ) 借地権者が借地上の建物の登記をした場合(借地借家法10条)
 地主Aから土地を賃借したBが、借地上の建物の保存登記をすれば、その後AがCに土地を売却した場合でも、BはC(第三者)に土地賃借権を対抗(主張)できる。

ⅲ) 建物の賃借人が建物の引渡しを得た場合(借地借家法31条)
 借家人が建物の引渡しを得れば、その後建物が売却されても、新家主に建物賃借権を対抗できる。

ⅳ) 農地の賃借人が農地の引渡しを得た場合(農地法16条)
 農地の賃借人が農地の引渡しを得れば、その後その農地が売却されても、新地主に農地の賃借権を対抗できる。


平成26年宅建試験
【問7】 賃貸人Aから賃借人Bが借りたA所有の甲土地の上に、Bが乙建物を所有する場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、Bは、自己名義で乙建物の保存登記をしているものとする。
1 略
2 Cが甲土地を不法占拠してBの土地利用を妨害している場合、Bは、Aの有する甲土地の所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使してCの妨害の排除を求めることができるほか、自己の有する甲土地の賃借権に基づいてCの妨害の排除を求めることができる。⇒正しい


【民法大改正資料の一覧】
民法大改正資料1 錯誤について
民法大改正資料2 意思能力について
民法大改正資料3 心裡留保について
民法大改正資料4 詐欺・強迫について
民法大改正資料5 意思表示の効力発生時期
民法大改正資料6 代理人の行為能力(民法102条)について
民法大改正資料7 民法105条 復代理人を選任した代理人の責任
民法大改正資料8 代理権の濫用
民法大改正資料9 職業別の短期消滅時効等の廃止 
民法大改正資料10 債権の消滅時効のおける原則的な時効期間と起算点
民法大改正資料11 定期金債権等の消滅時効
民法大改正資料12 敷金
民法大改正資料13 賃貸借の成立(民法601条)
民法大改正資料14 賃貸借の存続期間(民法604条)
民法大改正資料15 短期賃貸借(民法602条)
民法大改正資料16 不動産の賃借人による妨害排除等請求権
民法大改正資料17 不動産賃貸借の対抗力、賃貸人たる地位の移転、賃貸人たる地位の移転を留保する合意
民法大改正資料18 合意による賃貸人たる地位の移転
民法大改正資料19 賃貸物の修繕等(民法606条1項関係)
民法大改正資料20 賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了
民法大改正資料21 賃借物の一部滅失等による賃料の減額等
民法大改正資料22 転貸の効果(民法第613条関係)

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

氷見敏明

Author:氷見敏明
FC2ブログへようこそ! こんにちは、氷見(ひみ)です。私は、宅建指導歴20年、不動産会社、金融機関、専門学校、大学、財団法人、社団法人、クレアールアカデミー、住宅新報社等で老若男女を問わず、延べ1万人以上指導してまいりました。また、他の国家試験の民法の論文指導・解説等をおこない、その過程で多くの方々から質問を受け、受験生の疑問はどこかを熟知し、分かりやすい解説とは何かを追及しております。

主な著作物・『楽学宅建 基本書 』『楽学宅建 一問一答 ○×問題』『楽学マンション管理士(共著)』『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者(共著)』『まんが はじめて行政書士会社法』『まんが はじめて行政書士記述対策(共著)』『ユーキャンのマンション管理士これだけ一問一答集(共著)』『ユーキャンの管理業務主任者これだけ一問一答集(共著)』『マンション管理士再現問題集(共著)』『管理業務主任者再現問題集(共著)』その他雑誌等に記載多数。

最新記事
カテゴリ
リンク
月別アーカイブ
最新トラックバック
今日の運勢はどんなんかな?おっ!
今日の天気はどうかな?宅建試験日(10月第3日曜日)のお天気は?

-天気予報コム- -FC2-
検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QR
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる