民法大改正資料12 敷金 解説 民法改正 要綱案

現在、100年に一度の民法の大改正作業が行われています。来年(平成27年)の宅建試験には絶対に出題されませんから安心してください。しかしながら、知識の先取りをし、「宅地建物取引士」に向けて一緒に識見を高めていきましょう。なお、以下の記述は、あくまで平成27年2月10日時点における改正案であって、確定したわけではありません。さらに、修正される場合もありえます。 
  【平成27年3月10日更新


現在の条文】
 ありません。

改正案の内容】(H27年2月10日決定要綱案)
■ 敷金について、(1)(2)のような規定を設ける予定です。
▲ 敷金に関する判例を条文にしたもので、合格レベルにある宅建受験生ならば、全員、知っている内容です。
おっ、楽勝! v(^-^)


(1) 賃貸人は、敷金(いかなる名義をもってするかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この7において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
ア 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
イ 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。


(2) 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。

【コメント1】
① 民法には、敷金という文言が316条と619条2項に出てきますが、そもそも敷金とは何かという定義の条文がありません。そこで、判例(大判大正15年7月12日)や世間で一般的に理解されている内容を踏まえて敷金とは何かを明確にしました。

② (1)にあるように、敷金とは、「いかなる名義をもってするかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」です。
 たとえば、家主Aが自己所有の建物をBに賃貸し、借家人Bは敷金を家主Aに交付。借家人Bが賃料の支払いを怠ったり、借家を過失で壊したのに損害賠償しない場合、家主Aは、敷金から差し引くことができます。

③ 家主は、原則、通常損耗の回復費用を敷金から差し引いてはいけない
  畳を長い間使用していれば、表面がぼろぼろになるし、壁紙もはげてくるなど通常の利用の仕方をしていても生じる損耗(通常損耗)については、賃借人に原状回復義務はないと定められます。したがって、賃貸人(家主)は、通常損耗の原状回復のための費用を原則として、敷金から引くことはできなくなります。ただし、特約が問題となります。⇒この点については、後に別の個所で書きます。

④ 借家人Bは、賃貸借契約終了時に、家主Aに向かって、「敷金を返還してくれないなら、私も、借家の明け渡しはしませんよ」という同時履行の抗弁を主張することはできません
 明渡しが先です。昭和48年2月2日の最高裁判所の判例は,賃貸借が終了し,かつ,目的物が返還された時に敷金返還債務が生ずるとしています。
 これを踏まえて、(1)に賃貸人は、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき、賃借人に対し、返還しなければならない。」と定めました。
契約期間中の建物譲渡と敷金 改訂版1

⑤ 昭和53年12月22日の最高裁判所の判例によれば、「賃借人が適法に賃借権を譲渡したとき」も,賃貸人と旧賃借人との間に別段の合意がない限り,その時点で敷金返還債務が生ずると判示(判決で示す)しました。これを(1)の中にいれました。「適法に賃借権を譲渡」とは、賃貸人の承諾を得た賃借権の譲渡です。
敷金の譲渡改訂版1

⑥ 賃借人が、家賃の滞納をした場合に、借家人は、「敷金を3カ月分入れているのだから、そこから引いてくれ」と主張する権利はありません。⇒(2)の後段。


 以上、宅建試験に出題された内容ばかりです
ここに書いてあることは、現在の判例を条文にしただけですから、平成27年宅建受験生も、覚えなければなりません!

 では、卒業試験です。平成15年問11の宅建試験の問題です。これを正解できれば、あなたは、「敷金管理士大アドバイザー」です!!


〔問11〕 借主Aは,B所有の建物について貸主Bとの間で賃貸借契約を締結し,敷金として賃料2ヵ月分に相当する金額をBに対して支払ったが,当該敷金についてBによる賃料債権への充当はされていない。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。
1 賃貸借契約が終了した場合,建物明渡しと敷金返還とは同時履行の関係に立たず,Aの建物明渡しはBから敷金の返還された後に行えばよい。
2 賃貸借契約期間中にBが建物をCに譲渡した場合で,Cが賃貸人の地位を承継したとき,敷金に関する権利義務は当然にCに承継される。
3 賃貸借契約期間中にAがDに対して賃借権を譲渡した場合で,Bがこの賃借権譲渡を承諾したとき,敷金に関する権利義務は当然にDに承継される。
4 賃貸借契約が終了した後,Aが建物を明け渡す前に,Bが建物をEに譲渡した場合で,BE間でEに敷金を承継させる旨を合意したとき,敷金に関する権利義務は当然にEに承継される。




解説 正解 2
1 誤り。明渡が先です。
2 正しい。④の図を見てください。
3 誤り。⑤の図をみてください。
4 誤り。④の図の※を見てください、


【民法大改正資料の一覧】
民法大改正資料1 錯誤について
民法大改正資料2 意思能力について
民法大改正資料3 心裡留保について
民法大改正資料4 詐欺・強迫について
民法大改正資料5 意思表示の効力発生時期
民法大改正資料6 代理人の行為能力(民法102条)について
民法大改正資料7 民法105条 復代理人を選任した代理人の責任
民法大改正資料8 代理権の濫用
民法大改正資料9 職業別の短期消滅時効等の廃止 
民法大改正資料10 債権の消滅時効のおける原則的な時効期間と起算点
民法大改正資料11 定期金債権等の消滅時効
民法大改正資料12 敷金
民法大改正資料13 賃貸借の成立(民法601条)
民法大改正資料14 賃貸借の存続期間(民法604条)
民法大改正資料15 短期賃貸借(民法602条)
民法大改正資料16 不動産の賃借人による妨害排除等請求権
民法大改正資料17 不動産賃貸借の対抗力、賃貸人たる地位の移転、賃貸人たる地位の移転を留保する合意
民法大改正資料18 合意による賃貸人たる地位の移転
民法大改正資料19 賃貸物の修繕等(民法606条1項関係) 
民法大改正資料20 賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了
民法大改正資料21 賃借物の一部滅失等による賃料の減額等
民法大改正資料22 転貸の効果(民法第613条関係)


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氷見敏明

Author:氷見敏明
FC2ブログへようこそ! こんにちは、氷見(ひみ)です。私は、宅建指導歴20年、不動産会社、金融機関、専門学校、大学、財団法人、社団法人、クレアールアカデミー、住宅新報社等で老若男女を問わず、延べ1万人以上指導してまいりました。また、他の国家試験の民法の論文指導・解説等をおこない、その過程で多くの方々から質問を受け、受験生の疑問はどこかを熟知し、分かりやすい解説とは何かを追及しております。

主な著作物・『楽学宅建 基本書 』『楽学宅建 一問一答 ○×問題』『楽学マンション管理士(共著)』『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者(共著)』『まんが はじめて行政書士会社法』『まんが はじめて行政書士記述対策(共著)』『ユーキャンのマンション管理士これだけ一問一答集(共著)』『ユーキャンの管理業務主任者これだけ一問一答集(共著)』『マンション管理士再現問題集(共著)』『管理業務主任者再現問題集(共著)』その他雑誌等に記載多数。

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