民法大改正資料10 債権の消滅時効における原則的な時効期間と起算点 解説 民法債権法改正 要綱案

現在、100年に一度の民法の大改正作業が行われています。来年(平成27年)の宅建試験には絶対に出題されませんから安心してください。しかしながら、知識の先取りをし、「宅地建物取引士」に向けて一緒に識見を高めていきましょう。なお、以下の記述は、あくまで平成27年2月10日時点における改正案であって、確定したわけではありません。さらに、修正される場合もありえます。 
 【平成27年2月27日更新

早く簡単に結論を知りたい方は、下の【コメント1】を見てください
現在の条文の内容】
(消滅時効の進行等)
第166条
1 消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。
(債権等の消滅時効)
第167条
1 債権は、10年間行使しないときは、消滅する。


改正案の内容】(H27年2月10日決定要綱案)
◆民法第166条第1項及び第167条第1項の債権に関する規律を次のように改められます。
(債権の消滅時効における原則的な時効期間と起算点)
 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
(1) 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
(2) 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
(注)この改正に伴い、商法第522条を削除するものとする。


【コメント1】
① 現時点の原則的な消滅時効期間
 現在の民法によれば、債権は、権利を行使することができる時(弁済期)から10年間行使しないときは消滅します(民法166条1項、167条1項)。これが、消滅時効の原則的な時効期間です。
 権利を行使することができるという事(弁済期が到来したという事)を債権者が、知ったか否かを問わず、弁済期から10年行使しないと時効によって消滅します。


② 改正案を理解するための事例
 Aは、B君にお金を貸したが、返済期日は、B君の就職が決まり最初の給料日に支払うと決めたとしましょう。
 この場合、現在の民法であれば、最初の給料日(弁済期)から10年行使しなければ時効によって貸金債権は消滅します。
 Aが、B君の最初の給料日が来たということを全く知らなくても最初の給料日から10年行使しなければ時効によって貸金債権は消滅します。
 ところが、改正案は、以上の原則は維持しつつ(改正案(2))、最初の給料日が来たということを知ったときは、その知った時から5年行使しなければ時効によって債権は消滅するという内容を追加しました(⇒改正案(1))。


【コメント2】
 改正案(1)又は(2)のどちらか早い時期に、時効によって債権は消滅します。具体的な事例で確認しましょう。
【図1の例】のように、権利を行使できる日(例:弁済期)から2年経過した日に、行使できる事を知った場合には、知ったとき(主観的起算点)から5年経過すると時効によって債権は消滅します。この場合は、権利を行使できる日から7年経過すると時効によって消滅することになります。つまり、改正案の(1)が適用されます。
【図2の例】のように、権利を行使できる日から7年経過した日に、行使できる事を知った場合には、知ったときから3年経過すると時効によって消滅します。知ったときから5年経過する前に、権利を行使できる日(客観的起算点)から10年経過しているからです。つまり、改正案の(2)が適用されます。

消滅時効1の改訂版

暗記しましょ~ピシッ\(^^*)】
① 債権は、主観的起算点から5年で消滅する⇒知ったときから5年で消滅する!
② 債権は、客観的起算点から10年年で消滅する⇒行使できる日から10年で消滅する!
③ ①か②のどちらか早い時期に消滅する!


【コメント3】
① 現在の民法によれば、個人が個人から借金をした場合、弁済期から10年で時効により消滅します。
② 改正案によれば、お金を貸した債権者は、ほとんどの場合、弁済期を知っているでしょうから5年で消滅することになり、事実上、現在の民法より早く時効消滅することになります。

ⅰ) 現在の民法147条によれば、飲食店で飲んだり食べたりした飲食代金債権は弁済期から1年で消滅します(前回のブログ記事で記述したように、147条は削除されます)。
ⅱ) 改正案によれば、飲食代金の債権者は、当然に弁済期を知っているでしょうから、5年で消滅することになり、事実上、現在の民法より消滅時効期間が長くなります。
 
【コメント4】
(商事消滅時効)
商法第522条 商行為によって生じた債権(商事債権)は、この法律に別段の定めがある場合を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。⇒削除される予定です。
 
① 銀行預金は預金者にとっては債権であり、銀行にとっては債務に該当します。銀行は商法上の商人ですから、銀行預金は商事債権にあたり、最後に出し入れをした時から5年経過すると時効により消滅します。
※これは、法律上の話であって、実際には、銀行は、時効を援用しませんから、時効消滅したとしても、支払ってくれますが、倒産した場合は、援用するかもしれません?

② 改正案(2)(注)では、「商法第522条を削除するものとする。」と定めています。
 そのため民法改正案が適用されることになりますから、銀行は、請求があればいつでも払わなければならないことを知っていますから、5年の消滅時効が適用(⇒改正案(1))され、事実上、現在と変わらないということになります。

※ 自分の債権が商事債権に該当するのか一般的な債権に該当するのかの判断をする必要がなくなり、楽になります。
ほっ(^^)

【民法大改正資料の一覧】
民法大改正資料1 錯誤について
民法大改正資料2 意思能力について
民法大改正資料3 心裡留保について
民法大改正資料4 詐欺・強迫について
民法大改正資料5 意思表示の効力発生時期
民法大改正資料6 代理人の行為能力(民法102条)について
民法大改正資料7 民法105条 復代理人を選任した代理人の責任
民法大改正資料8 代理権の濫用
民法大改正資料9 職業別の短期消滅時効等の廃止 
民法大改正資料10 債権の消滅時効のおける原則的な時効期間と起算点
民法大改正資料11 定期金債権等の消滅時効
民法大改正資料12 敷金
民法大改正資料13 賃貸借の成立(民法601条)
民法大改正資料14 賃貸借の存続期間(民法604条)
民法大改正資料15 短期賃貸借(民法602条)
民法大改正資料16 不動産の賃借人による妨害排除等請求権
民法大改正資料17 不動産賃貸借の対抗力、賃貸人たる地位の移転、賃貸人たる地位の移転を留保する合意
民法大改正資料18 合意による賃貸人たる地位の移転
民法大改正資料19 賃貸物の修繕等(民法606条1項関係) 

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氷見敏明

Author:氷見敏明
FC2ブログへようこそ! こんにちは、氷見(ひみ)です。私は、宅建指導歴20年、不動産会社、金融機関、専門学校、大学、財団法人、社団法人、クレアールアカデミー、住宅新報社等で老若男女を問わず、延べ1万人以上指導してまいりました。また、他の国家試験の民法の論文指導・解説等をおこない、その過程で多くの方々から質問を受け、受験生の疑問はどこかを熟知し、分かりやすい解説とは何かを追及しております。

主な著作物・『楽学宅建 基本書 』『楽学宅建 一問一答 ○×問題』『楽学マンション管理士(共著)』『マンガはじめてマンション管理士・管理業務主任者(共著)』『まんが はじめて行政書士会社法』『まんが はじめて行政書士記述対策(共著)』『ユーキャンのマンション管理士これだけ一問一答集(共著)』『ユーキャンの管理業務主任者これだけ一問一答集(共著)』『マンション管理士再現問題集(共著)』『管理業務主任者再現問題集(共著)』その他雑誌等に記載多数。

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